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5分でわかる!「サリクスのコンセプト」

音楽家の使命

 ざっくりと言って、音楽家の使命は「音楽に近づこうとすること」だと私は思います。そのためにどれだけ真摯に音楽に向き合っていけるかが、音楽家には問われているのだと思います。

そこんとこ詳しく!

これがサリクスのコンセプトです!5分もかかりませんでしたね!!(笑)

 ただこれでは他の演奏団体となんら変わらないと言っているようなものなので、そのためにどのような方法、アプローチが考えられるかということについてを書きました。他の演奏団体と私たちを区別するのは、この使命のためにどういった手段をとっているか、だと思います。

「今まで誰も聴いたことのないバッハの演奏を」

 この目的のために私たちは、今までのやり方に囚われず、あらゆる可能性を排除せず様々なアプローチを取り入れながら、柔軟に取り組んでいます。

 以下はその一例と思っていただければ幸いです。

 

Salicus Kammerchorのレパートリー

 Salicus Kammerchorは古楽専門の室内合唱団です。グレゴリオ聖歌からJ. S. バッハまでのキリスト教声楽曲をレパートリーとしています。「古楽専門」といっても、年代としては9世紀から18世紀ですから実に900年ほど、非常に広いレパートリーを持っていると言って良いかもしれません。

 なぜこれだけ広範囲のレパートリーを持っているかというと、私たちが、西洋音楽の歴史を、より古い時点から、より新しい時点へと影響を与えながら変遷していったものだと捉えているからです。

 私たちが主たるレパートリーとしているバッハは後期バロックに属しますが、それは初期バロックの影響を受けざるを得ませんし、初期バロックの音楽は(そこで大きな転換が起こったにせよ)それ以前のルネサンス期のポリフォニーの影響を受けています。またルネサンス期のポリフォニーは中世の多声音楽、そしてグレゴリオ聖歌の影響をかなり直接的に受けています。

 キリスト教音楽の歴史を辿れるだけ辿って行き着いた、その源泉であるグレゴリオ聖歌の歌唱法が、その後の音楽を演奏する上でも非常に重要な土台になるのではないか、ということがサリクスの演奏の大きな前提となっているのです。

 

J. S. バッハの音楽の多様性

 もちろん後期バロックまでに音楽は非常に多様化し、バッハの音楽も実に多様な音楽的前提、背景のもと生まれたものです。

そこんとこ詳しく!

 多様な音楽へのアプローチは当然多様でなければなりません。グレゴリオ聖歌の歌唱法をもとに、バッハの音楽を捉えていくというのは、その多様なアプローチの中の、声楽的アプローチの一種です。これまで行われてきた、どちらかというと器楽的・鍵盤楽器的なアプローチに、こういったアプローチを加える事で、今までにはない新しいバッハの姿を提示できるのではないかと考えています。

 

Salicus Kammerchorのアプローチ方法

 声楽的アプローチとしてサリクスが拠り所とするのは、グレゴリオ聖歌の歌唱法です。そしてこのグレゴリオ聖歌の歌唱を書き表したものが「ネウマ」と呼ばれる図形です。

 ネウマというのは、簡単に言うと「旋律をどう歌うか」を書き表したものです。現代的な音の高低や長さを表す記譜法とは異なり、音をどのようにグループ化し、どのような抑揚で、どのような息遣いで歌っていくかというものを表したものなのです。

(ザンクトガレン式ネウマの一例)

そこんとこ詳しく!

 単旋律の歌いまわしをどうするか、ということを書き表したものとして、西洋音楽の歴史上この「ネウマ」より精密で、こだわりと情熱に満ちたものはありません。西洋音楽は単旋律から多声へと変遷していったため、「旋律そのものをどう歌うか」ということに関して関心が薄れていったかのようです。少なくとも記譜法の変遷からはそのことが伺われます。

そこんとこ詳しく!

 記譜法の歴史としては、歌いまわしを書き表した「ネウマ」から、音の高低、長短を正確に書き表せる「計量記譜法」へと変遷しました。

 しかし、歌いまわしを書き表さなくなったからといって、その歌いまわしそのものが無くなってしまったわけではありません。この歌いまわしは、書き表すまでもない前提として西洋音楽の根底にあり続け、少なくともバッハの時代まではその影響がかなり色濃く残っているのです。

そこんとこ詳しく!

 こうした前提を理解することなしに、現代の私たちの目線からバッハの音楽を捉えてしまうとどうでしょうか?楽譜に書かれているものだけを読み取って演奏してしまうことになりかねません。

 楽譜は万能ではありません。「書き表せないこと、書き表すまでもなかったもの」は楽譜には存在しません。

 特にバッハは基本的に自作品を自ら演奏しましたから、書き留められた情報は最低限です。これら楽譜からのみでは得られない情報を得る努力をすること、そしてそれをバッハより過去の資料から読み解いていくこと(バッハは自分の死後の音楽について知るよしもありませんから当然といえば当然です)が、サリクスのコンセプトです。

 そして、私たちがその中で最も重要視しているのが、グレゴリオ聖歌の歌唱法を応用する、つまり「ネウマ的にバッハを歌う」ということで、これがSalicus Kammerchorを他団体から差別化する最も大きな要素です。

 

まだまだあるその他のアプローチ

 もちろんこの他にも様々なアプローチが必要です。音程のとり方一つとっても、9世紀から18世紀までをレパートリーとしているため、その間の変遷を注意深く見極めなければなりません。何を協和しているとみなし、何を不協和と見なしていたか、またその当時用いられていた調律法などが、歌い手が音程を取る際のヒントとなります。

そこんとこ詳しく!

 またバロック期は、現代の長調・短調のシステムが確立する過渡期にあり、それ以前の音楽の捉え方、教会旋法の理解なしには読み解くことが難しい部分があります。音楽の捉え方の変遷ということにも注目してそれぞれの時代、地域の音楽を把握していかなければなりません。

そこんとこ詳しく!

 これらは音楽をざっくりと大枠で捉えた上での傾向を表したものですが、もちろん個別の曲に対しては、その作曲家ごと、その作品ごとのバックグラウンドを把握し、楽譜の裏側にある作曲者の意図、作曲者が見ていたであろう音楽の姿を捉えようとしていかなければなりません。

そこんとこ詳しく!

バッハの個別のモテットについて解説しています↓

第2回定期演奏会で演奏した個別の作品に対する解説です↓

 これらの取り組みを通して、サリクスの大きな目標である「今まで誰も聴いたことのないバッハの演奏を」皆様にお届け出来ると信じています。

 これからの私たちの活動にご注目、応援していただけると嬉しいです。

 

サポート会員募集!

 Salicus Kammerchorでは、活動の維持のためのサポート会員を募集しております。このような活動にご賛同いただける方は、どうか私たちの活動をご支援ください。

 サポート会員様には、様々な特典をご用意しております。定期会員の年会費は10,000円、ご寄付は一口3,000円となっております。

 詳細はコチラのページよりご確認いただけます。お問い合わせはsalicus.office@gmail.comよりお気軽にご連絡ください。

 お申込みをご検討いただければ幸いです。

(櫻井元希)

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【次回公演】

Salicus Kammerchorの次回公演は来年2018年5月の第4回定期演奏会です。

また関連公演として、Ensemble Salicusのデビューコンサートが10月18日に予定されています。

詳細はコチラ↓

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【最新動画配信!】

第2回定期演奏会より、Heinrich Schütz “Musikalische Exequien” op. 7 III. Canticum Simeonisを公開中です!

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