第38回 Ensemble Salicusデビューコンサートの概要〜ミサ式次第に沿って
いよいよEnsemble Salicusのデビューコンサート、
グレゴリオ聖歌とフランドル・ポリフォニー
〜単旋律聖歌の魅力とそれに育まれた多声音楽〜
の公演が迫ってまいりました。
今回はこの公演で演奏いたします曲目をざっくりと説明したいと思います。
詳しくはレクチャーでお話しますので、今回の記事では本当に選曲のコンセプトの概要だけをお話いたします。
ミサ式次第
今回の演奏会では、カトリックのミサの式次第に沿って選曲しております。
ミサには大きく分けて2つの異なる種類の聖歌が含まれています。一つは通常唱Ordinarium、もう一つは固有唱Propriumです。
通常唱というのは我々が普通にミサ曲と聞いて思い浮かべる、
"Kyrie"(憐れみの賛歌)
"Gloria"(栄光の賛歌)
"Credo"(信仰宣言)
"Sanctus"(聖なるかな)
"Agnus Dei"(神の子羊)
の5つのことで、これはどのミサでも変わらず同じテキストが歌われるため、通常唱と呼ばれています("Ite missa"閉祭唱を加え6つとすることもあります)。
それに対し固有唱というのは、1年の中で特定の主日、祝日にしか歌われないテキストを持つ聖歌です。その主日、祝日に固有の歌のため、固有唱と呼ばれています。
"Introitus"(入祭唱)
"Graduale"(昇階唱)
"Alleluja"(アレルヤ)
"Offertorium"(奉納唱)
"Communio"(拝領唱)
がこれにあたります。
今回は主の昇天の祝日のための固有唱を選びました。
この祝日は大変喜ばしい祝日なので、Gradualeの代わりにAllelujaが歌われるので、Allelujaが2曲続けて歌われることとなります。
この他に実際のミサでは集会祈願Collecta、2つの聖書朗読EpistolaとEvangelium、Sanctusの前に歌われるPrefatio、Agnus Deiの前に歌われるPater noster、Communioの後にPostcommunio、そして閉祭唱としてIte missaがあります。
演奏時間の都合上Collectaと2つの聖書朗読は省略致しますが、それ以外はミサの式次第通りに演奏を進行いたします。
ひとまず通常唱と固有唱に的を絞ってまとめると、このような流れになります。
これら10曲を、主にグレゴリオ聖歌で歌っていくのですが、 いくつかはグレゴリオ聖歌の代わりに、同じテキストのフランドルのポリフォニーを演奏いたします。以下がその曲目です。
Josquin des Prez (ca.1450/55-1521):Credo / "De tous biens playne"
ジョスカン・デ・プレ:クレド/「あらゆる良いものに満ち」
Heinrich Isaac(ca.1450-1517):Agnus Dei (Missa paschale)
ハインリヒ・イザーク:アニュス・デイ(復活節のミサより)
Heinrich Isaac(ca.1450-1517):Communio in ascensione Domini
ハインリヒ・イザーク:主の昇天の祝日の拝領唱
そして最後に、ミサの式次第が全て終わった後に、閉祭の歌として以下のモテットを演奏いたします。
Josquin des Prez (ca.1450/55-1521):"Domine, dominus noster"
ジョスカン・デ・プレ:「主よ、我らの主よ」
これら全てをまとめると以下のようになります。
ちょーっとヤヤコシイのは否めませんが、青が通常唱、オレンジが固有唱、緑がグレゴリオ聖歌、黄色がポリフォニーということでまとめました。
そしてこれらは通常唱と固有唱のみですが、これに朗読等を加えると・・・
あーーヤヤコシイですよねえ。そうですよねえ。わかります・・・。
でも大丈夫!こんなこと知らなくても全く不足なく音楽は楽しめます!全然問題ないです!
ただまあ、今なにやってるとこかなあってのがわかるだけでも、ちょっと聞こえ方が変わってくるかもしれません。
それに一見ヤヤコシイですが、一度覚えてしまえばなんてことありません。(ヴォーカル・アンサンブル カペラやヴォーカル・アンサンブル アラミレの演奏会に足繁く通うときっとすぐ慣れますよ♡)
今度のレクチャーコンサートでも、知らなくたって全く不都合はないけれど、知っていると聞こえ方が変わってくるかも、というようなことをお話していく予定です。
各曲について
各曲の詳細な解説はレクチャー本編に譲るとして、それぞれおおまかにどういう曲なのかということを最後に説明したいと思います。
グレゴリオ聖歌
通常唱
通常唱は歌詞はどのミサでも共通ですが、旋律は様々ありまして、各ミサごとにその旋律を選ぶということになります。今回演奏する通常唱はミサ第1番と呼ばれるもので、復活節に歌われる旋律です。
固有唱
主の昇天の祝日のための固有唱は、大変喜びに満ちたもので、固有唱全てのテキストがAllelujaで終わります。さらに上でも少し述べましたがGradualeがAllelujaに代わってしまっているので、反復も含め、数えてみるとなんと合計12回もAllelujaというテキストが歌われます。12という数字は天の象徴3、地の象徴4をかけ合わせた数字で、完全数と呼ばれる特別な数字です。
ポリフォニー
ジョスカン・デ・プレのクレド/「あらゆる良いものに満ち」は、いわゆるミサ断章と呼ばれる、5楽章がセットになっていない単独のクレドです。グレゴリオ聖歌のクレドの旋律に加え、Hayme van Ghizeghemの作とされるシャンソン「あらゆる良いものに満ち」を定旋律として持つ、いわばダブル定旋律のクレドです。
ハインリヒ・イザークのアニュス・デイは復活節のミサからとりました。このミサはオルガンの即興と交互に演奏していたと考えられている「アルテルナティム」の様式で書かれた、5声の華麗なミサです。今回はグレゴリオ聖歌と交互に演奏いたします。
イザークは1年間の全ての主日、祝日のための固有唱全てをポリフォニーで作曲した「コラーリス・コンスタンティヌス」の作者として有名ですが、拝領唱はこの曲集からとりました。最上声部に定旋律を置いた短くシンプルな作品ですが、終結部のallelujaは彼の真骨頂、ゼクエンツ(模続進行)で書かれ、イザーク節を聞かせてくれます。
閉祭の歌として演奏いたします、ジョスカン・デ・プレの「主よ、我らの主よ」は詩編第8編からテキストをとった5声のモテットです。Vagansという名前の声部がDomine, Dominus nosterの8音節8音の旋律を、回を重ねるごと音価を増やしながら4回繰り返すという興味深い構成を持った作品です。
これらの作品を、レクチャーを交えながら演奏していきます。グレゴリオ聖歌を演奏する演奏会は数あれど、それがメインとなる演奏会は滅多にないかと思います。それはやはり、現代の私たちの感覚からすると、グレゴリオ聖歌が、癒やされるけど単調、退屈、というイメージがあるからかなと思います。
そういったイメージを覆すような、躍動感ある、時に官能的であり真に感動的な演奏を私たちはしていきたいです。またレクチャーによって、そういった退屈なイメージを払拭、思わず歌いだしたくなっちゃうようなグレゴリオ聖歌の魅力をお伝えできればと考えています。
どうぞ演奏会にお越しください!
【次回公演】
Salicus Kammerchorの次回公演は来年2018年5月20・23日の第4回定期演奏会です。
また関連公演として、
Ensemble Salicusのデビューコンサートが10月18日に予定されています。
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