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第3回 母音の響きをよくしよう〜共鳴について〜

〜ネウマ的に歌うための発声エッセンス〜第3回目です。

1回目は声のバランスを整えるエクササイズ、2回目は呼吸についての記事を書いてきまして、今回は、いよいよ実際の歌声に大きく関わってくる「共鳴」についての記事になります。

 

「響き」ってそもそも何?

「声をよく響かせて」「響きが低い・高い」「前に響かせて」などなど、歌をやっていると様々な表現で「響き」について触れられることと思います。

そもそも、この「響き」というのは一体何なのでしょうか。

声帯で作られた音が、どのように声に変わっていくのかを追いながら考えて行きましょう。

 

喉頭原音と共鳴腔

声を出す際、まずは声帯が肺からの呼気で振動します。

この時、声帯の振動音は「ブー」というブザー音だろうと言われています。

これを「喉頭原音」といいます。

この音が、咽頭共鳴腔や口腔共鳴腔、鼻腔共鳴腔などの共鳴器(声道といいます)を通過することで様々な倍音が強調されて、音色が変化します。

管楽器も、唇の振動やリードの振動だけではブーという音しか出せませんが、その音が楽器という共鳴器に吹き込まれると、それぞれの楽器の共鳴腔によって音色を豊かに変化させると思います。

人間の場合は、声道を様々な形状へ変化させることが出来るため、出せる音色の幅が広いです。

楽器の大きさや形を、演奏しながらぐにゃぐにゃに変化させられる、という感じです。

まさに変幻自在、声には凄まじい可能性が眠っているんですね。

だからこそ、様々な声を持つ歌手がいて、様々な音楽のジャンルによって求められる声のスタイルが多用化してきた…そして、これからもより幅広く広がっていくのだと思います。

 

「響き」とは…? そして、響きに関わる重要な二つの器官

人間の声は色々な音色を出せるということをわかった上で「響き」というものを僕なりに解釈して別の言葉に置き換えます。

それは「母音の発音」です。

人間が声帯を使って出す声の響きは「母音の発音」という括りでまとめることが出来ると思います。

自分の理想とする声の持ち主の歌を聴くときにそれぞれの母音がどのように発音されているのかを意識して聞いてみましょう。

「響き」イコール「母音の発音」ということで前提条件を立てました。

響きを思うように変えていくには、母音の発音に関わってくる器官を思い通りに動かせるようになりましょう。

声道の形を大きく変える二つの器官が重要だと思っています。

それは「舌」と「喉頭」です。

これらが発音にどう関係してくるのでしょうか。

まずは舌の方から見ていきましょう。

 

調音点と母音四角形

舌は、声道のうち主に口腔内のスペースの調節を行い、母音の発音の明瞭さに深く関わってきます。

音声学の世界で使われる母音四角形を見ながら、解説していきます。

この図は、上顎と舌の位置関係を示した図です。

舌が上顎に対して最も接近する位置を点で示しています。(調音点といいます)

母音の発音というものは、声道の中の

咽頭共鳴腔(のど側)

口腔共鳴腔(口側)

がどういうスペースを取るかで決まっていくらしいです。(この辺は難しいので割愛します!)

つまるところ、それぞれの母音の調音点の位置に舌があれば、対応した母音が発音されるようです。

つまり、それぞれの母音が明確に発音されるためにはこの図の通りに舌を配置できれば良い!

ということです。

この図の通りの位置に舌を置いた時のイメージ図を作りました。

東京外語大学の英語教育学の根岸研究室教材開発ユニット様より発売されているアプリケーション「発音図鑑」を参考にさせていただきました。

口の中で、舌がこんなにも動いているということ、ご存知でしたか?

(い〜え〜あ〜お〜う〜というのはよく使われる発声練習ですが、その発声の過程で、口の中の舌の調音点の位置が、

「い」の前が高い状態から「あ」の平らな状態になり「う」の後ろが高い状態へと移っていくということがわかると思います。)

このような口の中の舌の状態を意識しながら、母音を発音していくことが大切なのですが、多くの人が、舌の高さが必要になる「い」と「う」の母音は顎を動かすことで舌の調音点を持ち上げて発音してしまっていることが多いです。

「お」や「う」は喉仏を降ろしてこもった音にしてしまったり…いろいろな癖がありますね。

声が明るく響く共鳴腔の作り方を身につけるために、良いエクササイズがありますのでご紹介します。

・割り箸エクササイズ

その名も割り箸エクササイズ!

やり方は簡単で、割り箸を噛みながら「いえあおう」「うおあえい」と発音を行っていくだけです。舌をよく動かすのが目的なので、割り箸が舌に当たって動きを邪魔しないように、歯の外側で噛むようにしてください。

この際に、下の図のように、舌の調音点がV字を描いて移動していくように意識をして動かしていくのがポイントです。

この状態で綺麗な母音の発音ができれば、口の中の舌の動かし方はかなり上手になっていると言えると思います。

2つ気をつけたいことがありまして、まず1つは大きい音を出そうとしないことです。

声帯をのどの外側の筋肉を使って強く閉じてしまうと、声の倍音成分を声帯の閉鎖によって足してしまうのですが、そうすると舌の位置が悪くても発音が少しはっきりしてしまいます。

小さな音量で、それぞれの母音が明るく発音できるように意識しましょう。

2つ目は、自分の発音をよく聞き分けよう、ということです。

陥りやすいミスが二つありまして、それを例にしましょう。

・「i」が「I」になってしまう

・「ɛ」が「æ」になってしまう

というミスです。

この場合、舌の調音点はそれぞれ発音したい母音より少し後方斜め下に落ちてしまっていることになります。

先ほどの母音四角形の図と照らし合わせながら、様々な母音を正確に発音しわけられるように、舌を細かく動かせるようになりましょう!

割り箸を使うのが嫌な方は、こんな商品もありますよ。

 

喉頭の位置と声の音色について

舌の働きについては簡単に説明できたので、続いて喉頭が声の音色に与える影響について考えていきます。

喉頭はどこかの骨と関節でくっついているわけではなく、上下から筋肉によって吊るされています。上下の筋肉がはたらき方のバランスを変えることで、上にも下にも、ある程度自由に動くことができます。

あくびをすれば下に、物を飲み込めば上に動くと思うので、のどを触りながらやってみてください。

動きましたか?

この動きが声の音色にどう影響を与えるのでしょうか。

 

喉頭の位置と声道の長さの関係、声道の長さと音色の関係

喉頭には声帯が入っているため、喉頭が上がり下がりすると、声帯の位置も上下に動くということになります。

声帯が上下に動くと、咽頭共鳴腔(声帯から舌のあたりまでの共鳴腔)の長さが変わります。

そして声道の長さ自体も変わります(短くなります)

舌が共鳴腔の中の形の調整を行ったのに対して、喉頭は共鳴腔の長さを調節するということです。

同じ「あ」の母音でも声が響く空間が変わると、音色が変わります。

以下の図は、喉頭が下がった時の発音の特徴と、喉頭が上がった時の発音の特徴を示した図です。

喉頭を下げた時の音色は、あくびをした時の声をイメージしてもらえれば、わかりやすいと思います。

響く空間が大きくなると、声はボヤーッとした音色になります。

また、舌が喉頭に伴って下がりやすく、発音も不明瞭になりやすいです。

喉頭が上げるのは、少し慣れが必要ですが、響く空間が小さくなると、声はキィーンとした音色になります。

タレントでいうと、哀川翔さんなどの声をイメージすると、喉頭が高い状態ではどんな声が出るのかわかりやすいと思います。

この喉頭の位置の違いによって、増幅される倍音の周波数がかなり変わるのですが、それがいわゆる「響きの高さの違い」になるのかと思います。

喉頭が下がりすぎていると高い周波数の倍音が少なく「響きが低い」となります。

喉頭の位置が適切だと「響きが高い」

喉頭の位置が高すぎると高い周波数の倍音が多すぎて「生声、のど声」

などという印象の声になり、実際にそのような指摘をされることが多いと思います。

声楽をやっていると、よく「あくびの喉の状態で」と指導されますが、

喉頭の位置は、一番音声が明るく響く位置に調整してあげるのが、よい響きのために必要なことかと思います。

舌も喉頭も、その位置によって声の音色を変化させられるということがわかりましたでしょうか?ネウマ的に歌うためには「複数の音の動きを一つの動きにグルーピングする」ということが大切なのですが、そのためにはまず、複数の音を同じ響き、つまり同じ発音で歌えるということが必須条件になります。

なので、発音を自由自在に操作できる、ということが非常に重要になってきます。

次回の記事では、今までに配信した

・タングトリル

・呼吸

・発音

を組み合わせて、一つの母音でネウマ的に歌うことについて考えていきます。

お楽しみに!

(富本康成)

 

バックナンバー

第1回 「声の硬さを取ろう」〜タングトリル〜

第2回 「息の流れをよくしよう」〜呼吸について〜

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